未払い金の消滅時効を原則5年に統一へ
現在、民法典が大きく改正されようとしていることをご存知でしょうか。
この4月14日、民法の債権に関する改正案が衆議院で可決され、今国会で成立の見込みです。
早ければ、2019年秋にでも施行されそうです。
ここでは、改正のうち、債権の消滅時効について解説したいと思います。
現在の民法では、債権の時効について、「債権は、十年間行使しないときは、消滅する」(民法167条1項)
「消滅時効は、権利を行使することができる時から進行する」(民法166条1項)と規定されており、債権の消滅時効は原則10年とされています。
そのうえで、職業別の短期消滅時効の規定が定められており、例えば、弁護士の報酬金債権は2年、飲み屋の付け払いは1年など、時効の早い特殊な債権が存在しています。
しかし、改正民法案では「債権者が権利を行使することができることを知ったときから5年間行使しないとき、権利を行使することができるときから10年間行使しないときには、債権は消滅する」という内容が定められています。
そして、職業別の短期消滅時効は廃止されることになりました。
その理由は、職業別で短期消滅時効を定めていることに合理的な説明がつかないことや、現代の取引の実態を反映していないと考えられたためです。
さらに、この改正に合わせて、商法522条の商事消滅時効(5年)の規定も廃止されることとなりました。
もともと、商法522条1項本文の「商行為によって生じた債権は、この法律に別段の定めがある場合を除き、5年間行使しないときは、時効によって消滅する」という「商行為によって生じた債権」の解釈が難しく、商法522条1項が適用される債権とそうでない債権の区別は不明確であり、そもそも民事の時効と商事の時効の区別をするのが適切でないと考えられたためです。
新しい民法が施行されてすぐに原則5年の消滅時効が適用されるわけではなく、おそらく数年移行期間が設けられると思いますが、近い将来、債権の時効管理が大きく変わることは間違いありません。
一方で、労働者の賃金債権の消滅時効を2年と定めている労働基準法115条はそのまま残されるようなので、さしあたり、労務管理上は大きな変化はなさそうです。
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本号の担当は、弁護士 竹村 理紗 でした。