年明けから書類の保存方法が変わります
令和3年度税制改正で電子帳簿保存法が改正され、法人税と所得税について、令和4年1月1日から電子取引を行った場合の取引情報に係る電磁的記録の保管が義務付けられました。
意味が分かりませんね!今回はこの改正への対応方法について紹介します。
※正確性より概要を把握して頂くことを優先して、条文上の用語をできるだけ使用しないようにしています。
※電子帳簿保存法は電子取引のほか帳簿のデータ保存と書類のスキャナ保存に関する規定がありますが、紙保存している限り影響はないため、今回は省略します。
○電子取引?何が変わるの?
電子取引とは発注書・請求書・領収書等の書類のデータをメールやインターネットを通じて
授受する取引のことを言います。これまでは印刷して保存も可能でしたが、年明けからは
データのまま保存しないといけなくなりました。
つまり、紙のものは紙、データはデータで保存することが義務となります。
○どうやって保存すればいいの?
いくつか要件はありますが、お金をかけずに最低限の保存要件を満たすには下記の4点を
守る必要があります。
①訂正・削除の防止に関する事務処理規定を作成すること。 (国税庁HPにひな型があります)
②取引の日付・相手方名称・金額で検索できるようにすること。 →ファイル名を「㈱甘木・
20220431・194964円」等の一定の規則で三要素が含まれるようにする。
③税務調査の際にパソコン等でスムーズに書類を確認できるようにしておくこと。
④税務調査の際に調査官のダウンロードの求めに応じること。
面倒ですね!面倒ですが、法律の条文上データで保存していない場合には青色申告の承認取り消し事由に該当することになっています。国税庁の改正に関するQ&Aでは不備があっても
「直ちに青色申告の承認が取り消されたり、金銭の支出がなかったものと判断されたりするものではない」 とされてはいますが、わざわざ自分から弱みを作るようなことは避けるべきだと思われます。
今回は概要のみとなりますが、具体的な事例が集まればお知らせしていきたいと思います。
なお、データ保存対象の書類も、月次処理や決算のために引き続き印刷をお願いすることがあり
ますので、ご協力をお願い致します。
参考:国税庁「電子帳簿保存法一問一答【電子取引関係】」㈱税務研究所「週刊税務通信No.3674,No.3675,No.3676」
《具体例 》
○一般的な疑問
・全てのメールを保存しないといけないのか?
→取引情報の含まれていないメールに保存義務はありません。
・全てのPDFを保存しないといけないのか?
→取引情報の含まれていないPDFに保存義務はありません。
・全ての・・・ →取引情報の含まれていない・・・に保存義務はありません。
・自分一人で事業をしていて、書類は手書きなのでパソコンがありません→スマホ等で買物や決済をしている場合、データ保存が必要です。スマホのみでは保存要件を満たせない可能性があります。
○書類の受取方法
・先にメールで内容を確認した後、同じ内容の書類を紙で発行してもらっている
→データと紙の内容が全く同じであれば、紙のみ保存で大丈夫です。
・メールの本文に取引条件を記載している
→メールを保存します。
・書類がメールに添付されて届いた
→添付された書類をデータで保存します。
・ネットショッピング・ネットオークション
→領収書等をダウンロードできる場合、ダウンロードしたデータを保存します。
→明細が画面に表示されるだけの場合、ページごと保存、PDF等で保存、又はスクリーンショットを保存します。
・携帯電話やクレジットカードの明細が紙で届かない
→各会社のHPでダウンロードして保存します。
・届いたFAXはパソコンで内容を確認して印刷するかどうか判断している
→データで保存します。
・届いたFAXをパソコンで確認できる機能はあるが、そのまま印刷されるようにしている
→紙で保存します。
・事業で使用するアプリの利用料をスマホで支払った
→AppleかGoogleから領収書がメールで届くはずなので、メールを保存します。
・従業員がネットで注文して立替払いしている
→従業員からその注文に関する書類をデータで転送してもらって保存します。
・従業員がネットで注文してくれたけど、書類を送ってくれない
→税務調査の際はその従業員から税務職員に書類を提示してもらうことになります。
・元請の専用システムで受注・請求しているので、データの保存方法がわからない
→元請の担当者かサポートに確認してください。
○データの保存方法
・データの保存はどこに?
→パソコン本体、外付けハードディスク、クラウド、CD-RやMOディスクなどで大丈夫です。ですが、事故や雷などの災害に備えるため、パソコン本体以外に保存した方が安全です。
パソコン本体以外だとUSBメモリやSDカードでも大丈夫?
→保存要件上問題はありませんが、USBメモリやSDカードは想像以上にデータが消えやすいものです。長期保存には向かないため、他の媒体をお勧めします。
この際データ管理ソフトを導入したい
→JIIMA認証のソフトであればソフト側の要件は満たせます。ソフトを選ぶ際の目安にして下さい。
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『税理士法人 たけむら』 は 『高品質の申告とサービスで、安心と幸せをお届けします』
本号の担当は 杉之原チーム でした。