マイナンバーカードで25%還元
2016年、マイナンバー制度導入と同時に、顔写真付きの身分証明書として使えて、各種の行政サービスの手続きが円滑に進められることが売りの「マイナンバーカード」の交付も始まりましたが、現在まで取得は任意とされています。
しかし、制度開始から3年が経っても一向に取得率(約14%)の伸びない「マイナンバーカード」の普及に向け、国はありとあらゆる手を講じて、カード普及率を今後3年半でほぼ100%にする方針です。
その普及策のひとつとして政府が打ち出した方針が、20年9月~21年3月までの7ヶ月間で最大2万円までのキャッシュレス決済の利用や入金につき、25%に当たる5千円の「マイナポイント」を付与し、これに2千億円超の国費を投じる見通しです。この異例の「大盤振る舞い」は国会などで議論を呼びそうです。
政府は、巨額の予算を用意し還元率の高さをアピールしたい考えですが、利用拡大に向けては複雑な申請手続きなどが課題となりそうです。現時点では、12のサービスが参加する意向で、電子マネーはSuica(スイカ)やnanaco(ナナコ)など、スマホ決済はLineペイやPayPay(ペイペイ)などが含まれています。
マイナンバーはそもそも「税・社会保障・災害対策」の3分野に限定して個人と番号をひも付けることで、行政と国民のそれぞれにメリットがあると説明されてきました。
確かに行政にとっては、税務申告書への番号記載を義務化し、NISA口座との番号ひも付けをスタートさせ、2年後には全ての銀行口座と番号がひも付く予定で、国民の所得捕捉に向けて着々と動いていると言えそうです。
しかし、納税者としては、マイナンバーが付与されたことでメリットを実感できた場面が、今までにどれだけあったでしょうか。
マイナンバーを含む個人情報の漏洩、また、自然災害が続く昨今、災害支援にマイナンバーが有効活用されたという情報は今までに明らかにされていません。
納税者にメリットがあるならば取得率は自然と伸びるはずで、そうなっていないのは「マイナンバーカード」に利がないと納税者が判断しているからでしょう。
政府には今、一時的な25%ポイント還元という「ニンジン」をぶら下げるだけではなく、制度がかかえる問題点に向き合い、改善を進めることが求められているのではないでしょうか。
(出典:月刊「社長のミカタ」2019.11月号、朝日新聞デジタル2019.11/26、東京新聞WEB2019.11/20)
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